MAISON K(2期)

2025年

街にはさまざまな属性を持った空間、場所、スケール、マテリアル、色彩などが溢れている。Maison-Kの周辺を見れば、細い路地、昭和の後期から平成にかけて建てられたと思しき庭のない小ぶりな住宅、わずかな隙間に植えられた木々や玄関先の鉢植え、色とりどりの外壁や屋根など、多様な断片が入り組んでいる。私たちがMaison-Kで試みたのは、それらを改変し再編集することで、様々な差異が、様々に近接し、接触し、重なりながら人々の生活をイキイキと賦活するような、ある種の構造を見つけることだったと考えている。2期建物は全室メゾネットで、天井の高いスペースと低いスペースが上下に組み合わされている。この上下関係が交互に入れ替わり、上階の分節と相まって建物は異なる外形の集合体のようにも見える。2階に巡らせたバルコニーは、上下する立体路地のようでもある。そこには行き止まりがない。内外を回遊し、街の隙間へ視線を運び、都市的なスケールへの抜けとつながりを不意に感じる。あるところではオーバーラップし、あるところでは隣家と連続しているようにも見える。住人は異なる属性の空間を上下し、巡り、見通し、越境と通過、交錯を繰り返す。それぞれの空間や要素は、それぞれが独立して存在するのではない。接触と近接、重なりあいが動的な全体性を孕んだ構造を形づくっている。

掲載誌他
[GA JAPAN]196

DATA

所在地 / 東京都江戸川区南篠崎町
規模構造 / 木造 地上2階
主要用途 / 共同住宅
敷地面積 /235.85㎡
建築面積 / 132.38㎡
延床面積 / 216.48㎡
構造設計/yAt構造設計事務所 森部康司
施工 / 伊藤工務店
photo by 中山保寛