国分寺に建つ賃貸集合住宅。永らくこの地で暮らしていらっしゃった建主の「街に貢献する建物を造りたいとい」という思いからこの計画は始まりました。街の賑わいを創出すべく店舗とコワーキングスペースを併設し、建物の足元にはささやかながらも街の小さな広場になるようなデッキスペースを設けました。住戸スペースは構造壁で緩やかに区切られた小さなセルがさまざまに連続する、住まいての多様な読み解きが可能な空間です。

９戸の賃貸併用住宅です。井桁状に配した構造壁にスラブを差し掛け、住戸は構造壁を跨ぐようにレイアウトしています。非構造壁の内外は、様々な素材や色で仕上げました。オーナーが海外製塗料や壁紙の輸入販売をされていることをきっかけとして、桜上水駅周辺の雑多で活力のある小さな粒が集まる都市の姿の写として考えたものです。全ての住戸は構造壁を挟んで床レベルの異なる２つのスペースにゆるやかに分かれており、「住む」「働く」「商う」をフレキシブルに組み合わせることができる計画です。1階には半店舗的なスペースも設けました。住むためだけではなく、さまざまなプレーヤーが交錯する場を目指し、多様な仕上げや色彩計画を採用したのはこの点も強く意識した結果です。 全体として構造壁の力強さと、それを頼りに多彩な人々や活動が集まる場所をイメージしました。

「高輪台テラス」は、「ヨシタケハウス」として知られた吉武泰水邸をコンバージョンした４世帯の集合住宅である。既存建物は高輪台南斜面の地所に３世代３家族のための邸宅として1992年に竣工した。地下１階、地上３階、シンプルなRCラーメン構造で、当時としては先駆的なホームエレベータを中央に配し、高齢化社会と住まいの多様化を見据えた、極めてラジカルな平面計画を採用している。同時に、緑豊かな周辺環境を建物４周から存分に取込み、構造フレームから自由になった白タイル貼りの外壁面は軽快に振る舞い、コーナー部分の膨らみが室内外を繋ぎ、坂を昇る来訪者を迎えるチャームとなる。オフィスビルを思わせるドライな平面図式と、人のための場所としての細やかさと豊かさを見事に両立している。都市部には「ヨシタケハウス」のように、その規模の故に取り壊される邸宅が多く存在しているはずだ。建築的価値はもちろんのこと、その場所固有の景観を維持するといった観点からも、それらは次世代に受け継ぐべきものであろう。本計画が優良住宅建築の最適再利用と、豊かな都市環境の維持に向けた、新たな試金石になることを望んでいる。

掲載誌他
[新建築]　23年2月号
[日経アーキテクチュア]　23年2月9日号
[JIA建築年鑑2022ー2023]

アーキネットと協働した「高輪台テラス」がグッドデザイン賞2022を受賞しました。
https://www.g-mark.org/award/describe/54575
建築計画学の開祖とも言われる吉武泰水の自邸「吉武ハウス」を、４戸の集合住宅に「転生」させたプロジェクトです。都市部には「吉武ハウス」のように、その規模の故に取り壊される邸宅が多く存在しているはずです。建築的価値はもちろんのこと、その場所固有の景観を維持するといった観点からも、それらは次世代に受け継ぐべきものです。本計画が優良住宅建築の最適再利用と、豊かな都市環境の維持に向けた、新たな試金石になることを望んでいます。