「ICHINOE」 ランドスケープ的リノベーション
2010年08月19日|TEXT|http://komada-archi.info/archives/1267
江戸川区一之江に建つ鉄骨3階建て店舗併用住宅のリノベーションである。1階の店舗を金型の工場に、2,3階の住居は家族4人のための全く新しい空間に造り変えることが求められた。
この計画を進める上での契機は大きく2つあったと思う。1つは既存建物が元々内部に構造要素の少ないシンプルなスケルトンであったこと。もう1つは南側が首都高速の高架、北側が落ち着いた並木道という対照的な環境に挟まれていたことだ。この2つの契機に対して私たちが目指したのは、シンプルなスケルトンの状態を空間のベースとすること。そしてそれを最小限の操作で対照的な2つの外部環境に呼応した、家族のための場に変容させることであった。
具体的には2階に湾曲した2枚の壁を、3階には箱形の壁を4カ所配置した。2階では2枚の鉄板の壁を通して、南と北の対照的な外部環境は緩やかに内部へと染込む。外壁も含めれば4枚のレイヤーが首都高速と並木道の間に挟み込まれ内部環境を調整するフィルターとして作用している。湾曲した鉄板は「ピアノハウス」でも試みたように、一義的に定まらない複雑な場をそこに生み出し、90㎡程あるワンルームに適度な空間的起伏を与えることが出来た。
3階は就寝のための個室や水廻りを並木通り側へ開くように壁を建てた。個室群の隙間のフリースペースは毛足の長いカーペット敷きで、2階のセカンドリビングと同様にそこでゴロゴロと寝転がれる「庭」のような場所である。
設計当初からリノベーションを建築行為一般の問題として考えるために、既存建物をいわば「敷地」と捉えようとしていたと思う。しかし結果出来上がったのは個室を除き、その殆どが3階のフリースペース同様「庭」のような場所だった。建築的な思考を目指した末に出来上がったランドスケープのようなインテリア。いささか混乱したままの話ではあるが、私たちにとっては意義深い経験であった。
ALC面の窓は既存の窓開口を出来るだけ利用しながら、その位置や大きさを新しい内部のために調整している。窓まわりが隈取りされているのは既存開口を埋めた新しい壁面と、既存壁面の塗装下地を揃えることが困難であったためで、リノベーションの履歴をそこに残すことにもなった。
(新建築「住宅特集」10年08月号)
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