「Folded W」 一筆書きの壁が造る囲い/「壁」がそこに在るという感覚
2012年06月29日|TEXT|http://komada-archi.info/archives/489
住宅や小さなアパートが所在なく建ち並ぶ新興住宅地の周縁部、「Folded W」は私鉄駅前から真っすぐに延びた新しい道の先に建つ。若い施主ご夫妻は、外部からの視線を気にする必要のない内に柔らかく閉じた空間と、将来家族が増えることに備えて増築が可能な計画を要望していた。まず私たちが考えたのは、「Winding W」で試みた1枚の壁を折曲げて場をつくる手法を応用することであった。増築にあたっては、一筆書きの壁を延ばせば良い。そもそもこの手法には、建築の在り方を完結したものでなく、オープンエンドの状態にしておきたいという思いがあった。
深く折曲げた壁がつくる襞のような空間の一つ一つは、充分に囲われているが決して閉じることはなく、スリット状の隙間を通して必ず外部とつながる。玄関、キッチン、ダイニング、リビングなどそれぞれ機能をあたえられた囲いは、相互の関係性に応じて壁を刳り貫くことで、全体として連続感のある複雑で奥行きの深い場を造り出し、天井高の変化とスリットから差す光がさらなる抑揚をもたらす。壁による分節と接続、そして空間が一つの像を結ばない多様で多義的な読み取りを可能にする場の造り方は、やはり壁の在り方について考えていた「M HOUSE」で試みた格子状の壁の交差部を刳り貫く手法の応用でもある。しかし、ここでは空間の形式性ではなく「壁」がただそこに在るという感覚が前面に出て欲しいと思った。モノとしての壁に寄り添いながら、人がそこに棲む。住み手の要望に先立って壁がそこに在ったような感覚。そんな感覚を大切にしたいと思った。
この感覚は建物の佇まいにも現れる。敷地は新興住宅街のいわば入口にあたる。敷地のはす向かいには小さな公園があり、緑のオープンスペースの中央にこんもりとしたマウンドがある。私たちはそこから見る建てものの姿を大切にしたいと思っていた。マウンドが古墳であることは後に知ったのだが、どこかジグラットの様な「Folded W」の佇まいと、このマウンドが対となって、人々の記憶に残る風景になればと願っている。
(2012年新建築「住宅特集」6月号)
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「FUNABORI」 予算600万円のリアリティー/フィクショナルな場を目指して
2012年06月19日|TEXT|http://komada-archi.info/archives/1273
予算を伺った時、「なにが出来る?」一瞬そう思ってしまった。90㎡築8年、なんの変哲も無い住宅の改修費用として提示されたのは600万円。しかし、同規模の新築マンションと比べると、中古住宅を購入した上で改修に掛けられる予算はこの程度である。すなわち予算600万円は、中古住宅のリノベーションが一般住宅市場の中で、有効な選択肢に成り得るためにクリアしなければならない、リアルな数字なのだ。
タイトな予算の中で、既存のリソースを最大限利用すること、新規の要素を出来るだけ加えないこと。この2つが設計の絶対条件となった。既存の壁を一部抜き、天井を剥がし、キッチンの位置を移す。そして、既存の床と壁を白く塗り込む。新しい要素は、2階のキッチンカウンター、1階へ光を落とすガラスの床、子供部屋からダイニングへ繋がるハシゴ、そして収納扉の小さなツマミ。私たちは、モノの見え方を徹底的にずらし、結果として空間の在り方を根本から変えること目指した。天井を抜くと既存の壁がついたての様になる。隠れていた天井裏は新しい天蓋となり、ガラスの床を通して見る向こう側は、まるでガラスケースに入っているかのようだ。子供部屋とダイニングを繋ぐハシゴは日常的な空間の配列を崩す。床や壁を白く塗ると、大量生産品のフローリングやモールディング、壁紙のパターンなどが元々持っていた意味が消え、テクスチャーや輪郭だけが残る。新調したダイニングチェアーも「椅子らしい」形を白く塗り込んだものをあえて選んだ。壁を貫くように斜めに配置したキッチンカウンターは、空間に動きや躍動感を与えるとともに、その異物感が際立っている。
どこにでもある日常的なモノの見え方を徹底的にずらし、ある種フィクショナルな場を造り出す。これがリアルな経済原理に応えるために私たちが考えたリノベーションの手法である。そしてそれは、リノベーションという行為には、新しくモノを造ること以上に、ある意味幅の広い表現の可能性が含まれていることに気づくきっかけともなった。
(新建築「住宅特集」11年06月号)
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CLW
2012年06月01日|住宅|http://komada-archi.info/archives/256
目黒区に建つ3世代が同居する住宅です。閑静な住宅街の敷地には古家の残した庭がありました。「CLW」は小さく開けられた沢山の窓でその庭を屋内から眺めるだけでなく、空間そのものが木々の茂った庭のような質を獲得することを目指しています。様々な色に染色されたシナ合板の壁の重なりが、視線の先が見え隠れする茂みの中のような奥行き感を生み、小窓から入るまだらな光が木漏れ日のように部屋に注ぎます。
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